心に届く歌






でも、謝らなくては。

ひとまず謝らなくては。



僕は立ち上がり謝ろうとした。

しかし、再び視界が酷く歪んだ。



「っ」



ふらついた僕は、気付いたら壺と化している花瓶に当たり割ってしまった。

プランタン国王様からティラン伯爵様に贈られた花瓶を。



プランタン国王様は怒り狂っている。

だけど、眩暈が酷すぎて僕は立つことが出来なかった。

気持ち悪い、きもちわるい、キモチワルイ。

吐いてしまいそう……気持ち悪いっ…!



そして気持ち悪さと同時に、僕はパニックを起こしていた。

ティラン伯爵様が怒り狂い怒鳴る姿は、恐ろしいほど両親に似ていた。



「ごめんなさいごめんなさい…ごめっ…なさい…」



お願い。殴らないで。蹴らないで。僕の全てを否定しないで…。



騒ぎを聞きつけたのか、メイド長が入ってくる。

そして、メイド長はこの世で1番酷い嘘をついた。

自分が押しつけたくせに…何でこの人は僕のせいにしているの。

信じられなくて、信じたくなくて、気付けば立ち上がって言い返していた。



でも、メイド長が笑って気が付いた。

僕とメイド長…一体どちらをティラン伯爵様は信じるのだろうか。

始めから、僕の崩壊は決まっていた。





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