心に届く歌






何故だかとても、嫌な予感がする。

わたしは階段を駆け上がり、急いで台所から出た。

誰にも会うことなく廊下に出ることが出来たのは、不幸中の幸いだ。




わたしは廊下をお屋敷の出入り口に向かいながら、お父様に電話をかけた。





『どうしたエル』


「ごめんなさいお父様。
用事が出来たので一足先に帰らせていただきますわ」


『お、おいエル……』




お父様が何か言っていたけどわたしは通話を切り、お屋敷の出入り口の扉を何も言わず開けて閉めた。

そして屋根の下を通りお屋敷の駐車場に停めてある家の車の運転席のガラス窓を叩いた。


本を読んでいた運転手はわたしの姿を見て、急いで運転席から出てきた。





「どうされましたかお嬢様」


「傘を貸してちょうだい。少しお散歩してくるわ」


「へっ?あっちょっ!お嬢様!!」




運転席に置いてあった傘を奪い取り、わたしは運転手の止める声も聞かずに雨の中歩きだした。




屋敷の中に少年はいなかった。

だから外にいるはず。





『面白かった』

『楽しかった』

口々に感想を述べるメイドと執事集団。

それに地下で見た血溜まり。





嫌な予感しか感じられない。

わたしは豪雨の中傘を片手にお屋敷の周りを歩いた。






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