心に届く歌
☆エルside☆
「っ……ごめんなさっ…思い出したら……っ!」
全てを話し終えたシエルは、ぼろぼろと泣いていた。
そりゃ、泣くよ。
わたしは横からぎゅっと抱きしめた。
「良いよ。思う存分泣いて良いよ。辛かったね」
「ヒック……うわぁぁぁああ…!」
声を上げて泣き出したシエルの背中をぽんぽんと優しく撫でる。
気付けばわたしも、一緒に聞いていたアンスも泣いていた。
愛しい人が、親友が、こんな辛い思いをずっとしてきたのを聞けば、泣くのも無理はない。
「……シエルのこと全部聞いて俺が思ったのは、シエルがエルちゃんを恩人だと言う理由がわかるな」
「……自分で言うのもなんだけど、わたしもそう思った。
わたしがシエルを探し出そうと思えて本当に良かった。
シエルをこうして、少しでも助けられたことが本ッ当に良かった」
わたしがいなかったらどうなっていたのだろうか。
想像するのでさえも辛い。
あの日は健康な人でも外に傘もささずに立っていれば風邪を引いてしまうほどの豪雨だったから。
でも、雨は水。
濡れて風邪を引くけど、痛くはない。
だけどシエルがずっと受けてきたのは、痛い雨。
「っ……エル様、エル様っ…エル、様……」
「もう大丈夫だよ。わたしがいるから、大丈夫」
「俺だっているぞ、シエル」
シエルは涙が流れ落ちる目をアンスへ向け、少しだけぎこちなく口角を上げる。
笑みをなくしても可笑しくない環境で育ってきたシエル。
ぎこちなくても少しでも、上げられるようになったのは大きな進歩だ。