心に届く歌
話し疲れたのと泣き疲れたののふたつが積み重なり、
シエルはわたしにもたれて静かに寝息を立て始めた。
「最初の頃のシエルは、近づくのでさえも怯えていたの。
触れようとしたら『触らないで!』って叫ばれたこともあるの。
随分進歩したわね……シエルも」
「完全じゃないにしても、シエルは救われてきているよ。確実に。エルちゃんにな」
「少しでもシエルが背負っていることが少なくなったら、わたしも嬉しい」
そっと冷たいシエルの頬に触れる。
白くてなかなか手触りが良かった。
ちょっと変態じみたことを考えたところで、咳払いをする。
「シエル、裏切り者は自分だって言っていたけど、最初に裏切ったのってソンジュさんの方よね」
「だろうな。
そもそもシエルは裏切り者だと言えるのか?」
「助けなかったけど、裏切り者とは言えない気がするわ。
そもそも、助けるなんて……難しいじゃない?」
助けたらどうなる、なんてわたしが拾った掟の冊子には書いていなかったけど。
それは助けたらどうなる、ではなく、助ける人がいないから書かなかったんだと思う。