心に届く歌






「……憎らしかったの、本当に。あの時は」

「…………」

「アイツはアタシを裏切った裏切り者。
そう考えてやまなかった」

「…………」

「本当の裏切り者は、アタシだった。
そのことを知らないで、アタシは復讐したの」

「……そう」

「彼は、ベレイは悪くないわ。
全てアタシの単独の行動よ」

「待ってくださいソンジュさん。
ぼくだって同罪です。
セレーネさんを殴れる人を集めたのはぼくです」

「良いのよベレイ。アタシが単独でしたの」



「アタシよ」「いやぼくです」

そう言い合うふたりを、わたしは不謹慎だけど綺麗だと思った。

信頼しているからこそ、相手を庇える。

例え自分が庇ったことによって重罪になったとしても。




「……シエルを今度連れてくるわ。
その時にふたり一緒に謝ってちょうだい」



ふたりは同時に頷いた。

そしてお互いを強く抱きしめ、涙を流していた。




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