心に届く歌







☆シエルside☆





「……んっ…」



軽く身じろぎをして、目を覚ます。

ぺら、ぺらと紙をめくる音が聞こえる。

窓からは涼しい風が入ってきていた。



「……おや。おはようございます、シエル様」

「ドクさん……おはようございます」



ぱたん、と読んでいた本を閉じるドクさん。

紙をめくる音は本だったのだとわかる。



「大丈夫ですか?」

「はい……なんとか。目、腫れていますか?」

「ええ……少し目を冷やしましょうか」



ドクさんが部屋を出て行き、僕は上体を起こす。

薄いカーテンが風により揺らめく先には、眩しい夕焼けが広がっていた。



「…………綺麗」



この国を、こんなにも綺麗だと思ったことがあっただろうか。

そもそも、この夕焼けを見て前の僕は綺麗だと思っただろうか。



……きっと、思っていないはず。

そもそも、夕焼けが広がっていたとしても、気にも留めなかった。

気にして、綺麗だと思えたのは、きっと少しだけ心や肩が軽くなったから。




「………ありがとうございます、エル様。
ありがとう、アンス。

僕の話を聞いてくれて、ありがとう」




今はいないふたりに向かい、僕は心からのお礼を言った。




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