心に届く歌
バシャ、バシャ、バシャ、
わたしの履いているヒールの高い靴が雨を弾き音を鳴らす。
お気に入りの靴も紺色のドレスもびしょ濡れだけど気にしない。
わたしはひたすらバシャバシャ雨の音を鳴らした。
「……どこにいるの……」
わたしの声は雨でかき消される。
溜息をついた時、ふと目線が道路に向かう。
道路には今日のような豪雨が降った時、大量の雨水が流れるよう、排水溝が設置されている。
床下浸水などを防ぐための排水溝に流れている雨水。
その雨水は所々、赤黒かった。
わたしは上から流れてくる赤黒い雨水を追いかけた。
そして道の真ん中に倒れている人陰に近づき、傘を傾けてしゃがみ込んだ。
「ッ!?しっかりしなさい!ねえっ!!」
うつ伏せだった体を仰向けにしたわたしは、息を飲んだ。
必死に呼びかけるけど反応がない。
激しい豪雨の中、傘もささず道に倒れていたのは。
紛れもなく、あの少年だった。
額から止めどなく血を流し、彼は浅い呼吸を繰り返していた。