心に届く歌






僕はベッドからおり、そっと扉を開けバルコニーに出た。

1度も出たことがない、広々としたバルコニー。

真っ白な手摺りに掴まり、夕焼けを見ながらあの歌を口ずさんだ。



「♪
太陽と月が巡り合う時
そこに生まれるのは優しさ……」



そこまで口ずさみ、ふと気が付く。



「……♪
太陽と月が巡り合う時
そこに生まれるのは優しさ

……この歌が国中に響きますように…
♪」




この歌が国中に響きますように。

出てきた言葉は、どこで聞いて覚えたかわからない歌の、先の歌詞だった。



その先も出てくるかと考えてみるものの、一文字も浮かばなかった。

鍵が開いたかのように、脳内に浮かんできた歌詞。




「……鍵が、開いた…」



僕は空に広がる夕焼けを見つめる。

きっと……この夕焼けを綺麗だと思えたから。

僕のことを、エル様とアンスに話せたから。



「……ありがとう、アンス」



僕は両手を夕焼けに向かって伸ばす。

届きそうなほど、大きなオレンジ。




「…………好き、です。エル様」




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