心に届く歌
「……終わりました」
「お疲れ様シエル」
ペンを置き、ぐーっと腕を伸ばして伸び上がるシエル。
夜もゆっくり眠れているみたいだし、心の方も安定している。
こうやって伸びをしたり、無防備な姿を見せることも多くなってきていた。
「…そういえばエル様、ひとつお願いがあるのですが」
「お願い?」
「僕に、歴史学を教えてくれないでしょうか」
「良いけど……どうして?」
「以前エル様やアンスから戦争の話を聞いて、もっと学びたいと思ってきたんです。
エル様さえお時間があれば…教えてください」
「良いわよ。わたしも勉強になるからね」
「本当ですか?良かった…」
まだまだぎこちないけど、前より口角を上げ笑うようになったシエル。
ぎこちなさが消えれば、笑いとまではいかないにしても、微笑み程度ならいけるだろう。
「学びたいってことは、興味出てきたの?」
「はい。
リュンヌ王国について…もっと知りたいと思いまして」
「良いわよやりましょうか」
わたしは机から歴史学の教科書を取り、ふと気が付く。
机の椅子に座っているシエルが、近い。
ふわりとシャンプーのにおいが漂ってくるほど近かった。
「……じゃ、やるわよ」
「はいっ」
お願い。
これ以上好きにさせないで。