心に届く歌
-2- Mate
「どうかしら?ドク」
わたしはドクの後姿に問いかけた。
ドクは振り向き、眼鏡を押し上げ難しい顔をした。
「だいぶ熱が高く衰弱が激しいですな…。
お嬢様が助けていなければどうなっていたか」
「……治るのよね」
「ええ。
暫くは解熱剤と栄養剤を点滴しつつ様子を見ましょう。
ところでよろしいのですか?」
「何が?」
「お嬢様のベッドに見ず知らずの少年を寝かせるなど。
お嬢様はどこで眠るおつもりですか?」
「わたしは床でもソファーでもどこでだって眠れるわ。
そもそも病人を床やソファーで寝かせるなんて真似、わたしには出来ないわ」
「まぁ……お嬢様が良いのであればよろしいのですが。
何かありましたら遠慮なくお呼びください。
ひとりの医者として、わたくしは彼を救い、お嬢様のお力になります」
「お願いするわドク」
ドクは自分の部屋から持ってきた包帯などの救護キットや
彼に刺した注射器などを鞄に仕舞うとわたしの部屋を出て行った。