心に届く歌
そんな決意をしてから1週間。
彼は今も熱が下がらず眠ったまま。
栄養剤で補ってはいるけど、血色も顔色も良いとは言えない。
わたしはずっと、彼に寄り添っていた。
何を言われるかわからない。
相手は心を持った生身の人間。
出身がどこであっても生きたわたしと同じ人間。
どこかできっと……繋がる部分があるはず。
根拠のない自信を、わたしは心に秘めていた。
「………んっ…」
かき消されそうな声がして、わたしはハッとする。
そっと覗くと、ゆっくりと彼の瞳が開かれていた。
睫毛が長く、長い前髪も目を開けると同時に一緒に揺れた。
「うっ……ん……?」
前髪に隠されて表情は見えないけど、首が少し動く。
わたしはきゅっと手を握った。
「目が覚めたかしら?」
まだ現実を読めていないのか、彼がわたしの方をゆっくり振り向いても、何の反応もなかった。
だけどわたしを見つめているのは、視線でわかった。