心に届く歌






待っていると運ばれてきた朝ご飯。

シエルはお粥を、わたしはパンを完食し、再び待っていると。




「エルちゃん良いかしら」

「どうぞお母様」



部屋に控えめに顔を覗かせ入ってきたお母様。

立ち上がると、お母様が眠っているシエルを見た。



「シエルくんどうしたの?大丈夫?」

「37度後半の熱出しちゃって…。
でもちゃんと朝ご飯のお粥は食べたから、すぐ治ると思うわ」

「ふふ。
昨日熱出しちゃったのにバルコニーにいたからかしら?」

「お母様、シエルが熱出したこと知っていたのね?」

「ええ勿論。……起こさないよう少し離れた所で話しましょうか」



わたしたちはちょっとベッドから離れているソファーに向かい合って座った。



「エルちゃんの素直な気持ちを聞きたいわ」

「ええ……わたしも素直に言うつもりよ」

「じゃあ単刀直入に……エルちゃんは、シエルくんのことどう思っているの?」

「好きよ。
出来ることなら、シエルと結ばれたいと思っているわ」

「恋愛として?」

「ええ勿論。
結婚して、シエルに家族を教えてあげたい」



お父様とお母様に触れ、シエルも少しは家族を知ってきたと思うけど。

本当に教えるには、シエルと家族になれば良い。

今の使用人と主という立場ではなく、ちゃんとした家族に。




「でも勘違いしないでお母様。

わたしは確かにシエルが好きだけど、
国のことも次期国王のことも忘れていないわ。

シエルと一緒に、この国を創っていきたいと思っているわ」



シエルは村出身で、わたしが知らないことをいっぱい知っていた。

シエルも自分が知らないことを、わたしがいっぱい知っていたはず。

初めて中心街出身ではないシエルが明るみになることで、この国を良くしていきたい。



「お父様とお母様には迷惑かけたわ。
でもわたしは、シエルが好き。

シエルと一緒になりたいと思っているわ。

困難だっていっぱいあると思うけど、
シエルが隣にいるのなら何だって出来るわ」



いつか本当の、心からのシエルの笑顔を見ることが出来れば。

ずっとずっと、シエルの隣で生きていたら。

決められた人生とずっと思っていたわたしも、変われるはず。




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