心に届く歌
☆シエルside☆
「っ……けほけほっ」
起きてすぐに咳き込む。
はぁ……昨日バルコニーに出過ぎたかな。
でも夜空綺麗だったし……。
良いことだってあったし……。
「シエル」
「こほっ……エル様」
「少し熱下がったかな……」
額に手が当たる。
でも前より触れられても大丈夫になった。
エル様には僕がずっと隠してきたものを見せたから。
あれがバレるのが嫌で、触れるのを拒否してきたからね。
「シエルくん大丈夫?」
「っ……イヴェール様……!けほけほっ」
「ほらー!
お母様がシエルを驚かせたから咳き込んじゃったじゃない」
「あら……ごめんなさいねシエルくん」
「だ、大丈夫です……ありがとうございます」
「シエルお水でも飲む?」
「良いですか……?」
「良いよ。淹れてくるからちょっと待って」
いつもお水がはいっているポットが常備してある、エル様の部屋。
でもエル様はポットを持ち上げ、「あー!」と声を出した。
「ごめんシエル!
水空っぽだったから、ちょっと汲んでくるね」
「わ、わざわざっ……!汲んで来なくても平気ですよ!」
「良いから良いから!お母様シエルをよろしくー」
エル様はポット片手に部屋を出て行く。
わざわざ汲んできてもらうなんて、悪いなぁ…。
「シエルくん、ちょっとお話良いかしら」
「え……?」
「素直に答えてちょうだい。エルちゃんのこと、好き?」
「え、えぇっ……!?っ、けほけほっ」
突然直球に聞かれて戸惑い、咳き込む。
息を整えてから、率直な疑問を投げかける。
「あの……突然どうされたんですか…?」
「どうなの?好きなの?」
「…………自分の身分わかっていますけど…好き、です。
ずっとずっと……エル様の笑顔を、見ていたいです」
「執事として好き?それとも男として?」
「……どちらの好き、もあります」
恥ずかしさで声が震える。
イヴェール様の顔が見れなくて俯いていると、クスッと笑い声が聞こえた。
「ふふ、素直で良いわね」
「あ、あの……何でこんなことを…」
ふたりきりになったから?
ずっと気になっていたから?