心に届く歌
イヴェール様は僕の質問に答えず、ソファーに近づき、
テーブルの上に置いてあったテレビのリモコンを持ち、テレビを点けた。
点いているのを見たことがなかったテレビが点く。
画面の中ではスーツ姿の男性が原稿用紙を読んでいた。
『先ほどもお伝えしましたが、繰り返しお伝えします。
ソレイユ王国正統王位継承者、エル・ソレイユ様と、
昨日行われました学力テストにおいて2位だったシエル・セレーネさんの熱愛報道が発覚致しました』
………え?
『詳しい情報はまだわかっておりませんが、
新聞社や当局が調べた情報によりますと、
プランタン・ソレイユ国王様は只今真相を究明中とのことです。
繰り返しお伝えします……』
イヴェール様はそこでテレビを消し、僕の方を向いた。
「わかったかしら?あたくしが何を言いたいか」
「……だから、僕に好きだと聞いたのですね…」
真相を知るなら、渦中にいる僕とエル様に聞くべきだ。
きっと僕が寝ている間に、イヴェール様はエル様にも聞いたはずだ。
「……エル様は、何と言っていましたか」
「好きだって堂々と言っていたわよ。
国民を説得させるともね」
「国民……?」
「次期国王のエルちゃんが、執事であるシエルくんと付き合っているってことは、国民中に広がっているの。
反対している国民だっているわ」
「…………」
昨日のプーセさん……本当にバラしたんだ。
微熱があっても、追いかけて引き止めれば良かった。
「今お屋敷中も混乱しているわ。
お父様や使用人は電話対応に集中しているわ。
お屋敷の前も大勢のマスコミで出歩けないわ。
エルちゃんとシエルくんは、静かになるまで家で待機をしていてちょうだい」
「…………」
僕が……引き止めていれば良かった。
微熱程度で諦めてしまったなんて。
幸せにするつもりが……逆に苦しめてしまっている…!
「も……しわけ……ありませんでしたっ…!」
謝ったってどうにかなるわけでも、騒ぎが治まるわけでもないけど。
迷惑をかけたのは事実だから……謝るしかない。