心に届く歌
イヴェール様は何も言わない。
僕はベッドからおり、入り口へ向かった。
「シエルくん?どこ行くの」
「お屋敷の前にマスコミがいるのなら…行ってきます。
これ以上エル様を傷つけるのはやめてくれって」
「ちょっと待ちなさい」
グイッと手を引っ張られる。
「シエルくんまだ熱あるでしょう?
そんな体で出て行かないで、大人しくしてなさい」
「だって……!
僕が悪いっ……僕が悪いんだからちゃんと訂正しなくちゃ…!」
「シエルくんが出て行っても騒ぎを大きくするだけ。
今はひとまず、体調を万全にすることだけ考えて」
「でもっ……!」
「……あとでふたり一緒に聞こうと思ったんだけど、今聞くわね。
だからひとまず座って」
イヴェール様に手を引かれ、ソファーに座る。
もうすぐで泣きそうになっている僕の背中を、イヴェール様は撫でてくれた。
「今日届いた新聞に、エルちゃんとシエルくんが抱き合っている写真が載っていたの。
新聞社に聞いたら、匿名の送り主から昨夜届いたんですって。
あの写真を撮った人に、心当たりはある?」
「……プーセ、様です…」
昨日プーセさんを家に呼んでしまったのは僕だ。
僕の行動がエル様を苦しめている…。
「どうしてプーセくんが?」
「……僕が、呼んだんです」
僕はイヴェール様に伝えた。
エル様を幸せにしてほしいと頼んだこと。
そうしたらプーセさんは、僕がプーセさんと結ばれるようエル様に言ったら、一筋になって幸せにしてやると言っていたことを。
言ってしまったことに後悔した僕が階段から落ち、不安からエル様を呼んだこと。
エル様が駆けつけてくれてくれたことも言った。
「それで、どうして深夜にふたりが会うことになったの?」
イヴェール様に聞かれ、何も言えなくなる。
行ったきっかけは……『あれ』を見られたことによって僕がエル様に酷いことを言ってしまい、謝ろうとしたから。
「……僕が…エル様に、酷いことを言ってしまって。
謝ろうと思い深夜に訪ねてしまい…写真を」
「どうして酷いことを言ったの?」
僕は何も言えず俯く。
イヴェール様が背中をさすって待っていてくれるけど…言えなかった。