心に届く歌
「……え……だ、れ……?」
「覚えていない?わたしのこと」
「……」
彼はゆっくり首を振る。
わたしは彼が聞き逃さないよう、名前を名乗った。
「わたしはエル・ソレイユ。
ここはわたしの部屋よ」
ソレイユの名を持つのは全て王族。
それを彼も知っていたのか、彼は震え始めた。
ガタガタと震えるのが、わたしにも伝わる。
「なっ……んでっ……ゴホッ」
「ちゃんと寝てなくちゃ駄目だよ。
まだ熱下がっていないんだから」
額に触れるとまだまだ熱い。
熱が下がるのはまだ先になるだろう。
「……どうして……ここに…?」
「覚えていない?
あなた、雨の中道の真ん中に倒れていたんだけど」
思い出したのか、繋いでいない方の手でぎゅっと布団を掴み、
目をぎゅっと強く瞑る彼。
わたしは彼の痛んだ髪をそっと梳いた。
彼の髪は痛み、指通りは悪く、触った感じもゴワゴワしていた。