心に届く歌
「お嬢様。
国民を納得させるために、策はあるのですか」
「……正直言って、ないわ」
「え」
「だって急すぎるんだもの。
プーセが勝手に写真を…」
「プーセ様が写真を?
そもそも、どうして熱愛報道が出てしまったのですか?」
わたしは、シエルが月の真珠に似たようなネックレスを持っていること以外、
伏せながら一部始終を語った。
月の真珠以外にも、熱で理性が飛んでしまったらしいシエルのことは言わなかった。
あれはわたしとシエルの秘密だから。
「…何故、シエル様は熱があったにも関わらず、エル様に夜中会いに行ったのですか?
色んなことがあってね、では納得いきません」
「……わたしがシエルのこと傷つけちゃって…」
「それで何故シエル様が会いに行くのですか?」
「わたしがシエルを傷つけて、シエルに出て行ってって言われちゃって。
それを謝りにシエルが来たのよ」
「どうしてお嬢様はシエル様を傷つけたのですか?」
月の真珠のことを話さなければ、説明出来ない話。
どうしようか迷っていると。
「……もしかして、月の真珠についてお話しされたのでは?」
「え?」
「プーセ様が月の真珠を持ってきたとは聞きましたが、
その話にわたしは違和感を抱くのです。
どうしていきなり、プーセ様は自分がリュンヌの王子だと思われる月の真珠を言い出したのでしょうか?」
「……確かに、突然すぎて違和感を持つわね。
ある日突然出てきたって言うの?」
「プーセ様が昨夜お嬢様のお部屋に行った時、お嬢様とシエル様が月の真珠についてお話しされているのを聞いてしまったのではないでしょうか」
ドクの言葉を聞き、ふと疑問を抱く。
プーセは一体、いつからわたしたちのことを見ていたのかしら。
シエルとの話に夢中で、周りの音なんて聞こえなかったあの日の夜。
知らないうちに部屋に、帰ったと思っていたプーセがいて、写真を撮られた。
もし、シエルが月の真珠だと思われるネックレスを持っているのを、プーセが見ていたら。
紺色の紐に真珠なんて、どこにでもありそうなデザインなのだから。
偽装することも……可能かもしれない。