心に届く歌
「体調は。大丈夫なのか」
「今のところはね……」
エルちゃんとプーセの婚約発表のニュースを見ていたら、
ドクさんから電話がかかってきた。
内容は、数週間だけでもシエルを預かってほしいというもの。
何でもシエルはここ最近体調が優れないようで。
理由は、シエルが好きだというエルちゃんが、遠い存在になってしまい、
好きなのに諦めなくてはいけないその苦しさが、
繊細なシエルは体調不良として現れるのではないかと言っていた。
本人は戻るつもりなどないらしいけど。
数週間後、シエルの体と心が同時に安定したらソレイユ家に戻すつもりだ。
ドクさんも『預かってほしいのです』と言っていたし、『迎えに行きます』と結び電話を終えた。
「熱はないみたいだな……」
「うん……あの家出てから体調良いんだ」
「まだ数分しか経っていねぇのに決めつけるな」
急な話で部屋がなかったため、当分は俺の部屋で一緒に過ごすことになるだろう。
男ふたりで同じキングサイズのベッドは可笑しいが、緊急事態だろう。
念のためドクさんの電話を了承した時、彼女には許可を取っていた。
彼女は「男にまで嫉妬しないし」とめっちゃ笑っていたけど。
「シエル、今日はもう寝ろ」
「ん……ありがとう、寝るね」
「待って。その前に風呂入れ」
シエルを風呂に連れて行き、外で待ち一緒に部屋に戻る。
「アンスお風呂は…?」
「シエルが寝てから入る」
「じゃ、早めに寝るね」
シエルは眠りに落ちる。
暫く様子を見ていたが、よく眠っているみたいで。
俺は風呂に向かった。