心に届く歌
風呂を上がり、部屋に戻ると、シエルはまだ眠っている。
俺は電気を消し、隣に寝る。
……まぁ、緊急事態だししょうがないだろ。
「……っ…う……」
「シエル……?」
隣でシエルが呻く。
上体を起こしシエルを見ると、シエルは顔をしかめてうなされていた。
「や……だ…、行かないで……待って…」
「シエル……」
「行かないで……良い子になるから……」
良い子になるから。
…まだ、あの両親思い出して苦しんでいるのか。
あの両親がシエルにつけた傷口は思ったより深いらしく、溜息をつく。
すると、シエルが少し落ち着いたらしく、寝息が聞こえてくる。
安心して息を吐くと、俺は気が付いた。
「シエル……」
シエルはぎゅっと、俺の寝巻の裾を握っていた。
指先が白くなるぐらい、強く握っている。
「シエル……お前まさか…」
一緒のベッドで寝ていたとは以前聞いた。
俺が問い詰め、ふたりが真っ赤になっていたことも知っている。
「エルさ……ま……好き……」
シエルの口元に、柔らかな笑みが浮かぶ。
ぎこちなさなんて見えない、柔らかい笑みが。
「一緒にいて……好き…」
笑みを浮かべながら、ぽたりと涙がこぼれる。
俺は布団に潜り、弟のようなシエルの頭を撫でる。
「……お前らに、俺は幸せになってほしいよ」