心に届く歌






「見て。包帯多いでしょ?」


「……っ」


「他にも包帯がいっぱい巻かれているの。
頭にだって」


「……痛っ」


「傷が癒えるまで触っちゃ駄目よ」




頭の包帯に触った彼は痛みで顔をしかめる。

わたしは苦笑いを浮かべた。

何だか天然な彼が面白い。




「熱だって高いんだから、下がって傷も全部癒えてから、出て行きたいのなら出て行って良いのよ。
しばらくは大人しくしていてね」


「…………」


「お返事は?」


「……ありがとうございます…」




話し疲れたのか、眠りに落ちる彼。

わたしは手を握ったまま、小さな声でドクに目覚めたことを連絡した。




『では後でお部屋に伺いますね』


「お願いドク。
……あとね、お願いがあるの」


『お願いですか?』


「ええ。
ドクにしか頼めないことなの。

報酬は好きなだけあげるから」


『……お嬢様のお頼みでしたら、何なりと』





わたしはお願いを言い、通話を終えた。




「……悪いわね、これがわたしのやり方よ」




あなたを救うと決めたから。

これがわたしの、やり方。






< 51 / 539 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop