心に届く歌







☆エルside☆





作曲者不明のあのピアノ曲。

ドクだったら知っていると思ったのに。

わたしは部屋に戻り、再度弾き出す。

やっぱり…うん、間違いない。



わたしの確信は間違っていないと思うけど。

じゃあ、シエルはどこであの歌を覚えたの?

本人はどこで覚えたかわからないと言っていた歌。

苦しい時、寂しい時にシエルが口ずさんでいた歌。

わたしはシエルの歌声を聞くのが好きだった。



「……電話しても、良いかな」



わたしはスマートフォンを手に取り、シエルの番号を呼び出しかける。

夜も遅いし寝ているかもしれないけど…。

一向に途切れない呼び出し音を聞いていると。




『……エル様?』

「シエルっ!」

『お久しぶりですエル様。こんばんはです』

「こんばんはーっ!」



出てくれたことに、思わずはしゃぐわたし。

クスッとシエルの笑い声が聞こえた気がした。



「シエル、いつ頃帰ってこれそう?」

『明確な日にちは…。ですが、エル様の結婚式には必ず行きますよ』



日に日に迫る結婚式。

わたしが口を噤むと、シエルが確かめるようにゆっくり聞いてくる。


『エル様……どうされました?』

「…結婚、したくない」

『……そう、ですか』

『シエル以外と結婚なんて…したくないっ!』



プーセに失礼だけど、わたしは電話口に向かって叫ぶ。

叫ぶと同時に涙が流れてきた。



「どうしてっ…わたしはソレイユなんだろう。
どうして、シエルと一緒になれないんだろう。
そんな現実…わたし知りたくなかったよ!」

『エル様……』

「ねぇシエル…わたしと駆け落ちしよう?」

『駄目です』



アッサリ言われてしまう。



『エル様は、ソレイユ王国を背負うべき運命をお持ちの方です。
エル様がいなくなったら…一体誰がソレイユ王国を担うのです?』

「シエルっ……」

『エル様、今どこにいらっしゃいますか』

「今…部屋だけど」

『じゃ、少しだけバルコニーに出てみてください』



わたしは言われた通り、バルコニーに出た。




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