心に届く歌
「ご飯、食べるかしら」
「……いらないです…」
夜6時。
早めの夕ご飯の時間。
わたしは彼を起こして一緒に夕ご飯を食べようとしたんだけど。
「まだ具合悪いの?」
「……平気です」
「じゃあご飯食べない?」
「いらないです……」
一緒に夕ご飯を食べようと
シェフに頼んで彼の分の夕ご飯も作ってもらったんだけど、
彼は頑なに「いらない」と食事を拒んでいた。
「少しでも食べないと、熱下がらないよ」
「……」
下がらないと出て行っちゃ駄目だと言ったからか、黙り込む彼。
わたしは自分の夕食を我慢しながら、彼の前に置かれたお粥のスプーンを手に取った。
「はいあーん」
「……ッ!!」
だいぶ冷めてしまったお粥を乗せたスプーンを口元に持って行くと、
彼はブンブンと首を振り、ぎゅっと目を瞑った。
「食べないと駄目だよー?」
「いらないですっ……」
次期国王であるわたしを目の前に頑なに拒む彼。
なかなかの強者である。