心に届く歌
「ごめんなさいね遅れてしまって」
「イヴェール様!」
シエルはお母様の前に立ち、一礼してから話しだす。
「皆様もプーセ様も、時間をくださると言ってくれました」
「そう。シエルくんありがとうね」
お母様もシエルの頭をぽんぽんっと撫で、今日のため用意された小さな舞台の上に乗った。
さっきはそこで、司会者が司会をしていた。
『皆様、今日は次期国王である娘のために、お集まりいただきありがとうございます。
式の前に、重大発表をしたいと思います。
エル、シエルくん、シッキーさん。こちらへ来てちょうだい』
マイク越しにお母様にわたしたちは言われた通り、お母様が立つ舞台の近くに並んで立った。
シエルの伯父だと名乗った男性は、シッキーさんというらしい。
『カメラさん、こちらに来てちょうだい』
結婚式の映像は、テレビで生放送される。
大きなカメラが、言われた通り近づく。
映し出された映像はテレビだけではなく、設置されたプロジェクターにも映し出される。
お母様は2枚の紙を取り出すと、カメラに向ける。
わたしたちはプロジェクターに映し出された紙を見た。
「……DNA鑑定証明書…?」
そう太字で書かれた文字の下には、シエルとシッキーさんではない人の名前が書かれている。
99、8%という数字も。
『先日より、あたくしとシエルくんは、彼…シッキーさんともうひとりの男性とのDNA鑑定のためノール村にある研究所に行っていました。
もうひとりの男性は、今日用事があり来ることは出来ませんでした』
簡潔に説明したお母様は、2枚目をカメラへ近づける。
そこにもDNA鑑定証明書と書かれた下に、シエルの名前が書かれている。
今度はシエルの名前と一緒に、シッキーさんの名前が書かれていた。
【シッキー・リュンヌ】
「……リュンヌ…!?」
亡き王国の名前に、気付いたのはわたしだけじゃない。
国民も驚いているようで、「どういうことだ」と騒いでいる。
シッキー・リュンヌさんとシエルのDNA鑑定の結果は、99、8。
そのほぼ100%の数字は、シエルとシッキーさんが身内だということを表していた。
「だから言っただろ?私はシエルくんの伯父さんだって」
シッキーさんは、シエルの頭を撫でながら笑っていた。