心に届く歌
『この結果を見て、皆様おわかりでしょう。
ですが、信頼出来ない人もいるはずです。
……シエルくん、おいで』
シエルは頷き、階段を上がり舞台に乗る。
プロジェクターにシエルの顔が映った。
そしてシエルは、ゆっくりと前髪を上げた。
そこには、紺色の紐に通された5つの真珠。
外したシエルは紐を握ってカメラに近づけた。
『シエルくん、貸してちょうだい』
「何でふたつあるんだ」と戸惑う国民を見たお母様は、シエルの持つネックレスを受け取り、紐の一部をカメラに近づける。
そこには黄色い糸で、文字が縫われていた。
【I・SOleiu&R・lune】
イヴェール・ソレイユ&エテ・リュンヌ。
お母様と、親友で会ったリュンヌ王国王妃様の名前だ。
『このイニシャルを縫いつけたのは、あたくしです。
あたくしが、自分で縫ったものを間違えるはずありません』
「じゃあ……シエルが持っているのが、本物の月の真珠…!?」
わたしの声に、国民が一気に騒ぎ出す。
ずっとなくなっていた月の真珠が発見されたのだ。
トップニュースであり新聞の一面を飾れる出来事だった。
「え……?じゃあ、何でお母様、プーセのを正しいなんて」
『月の真珠があったから、あたくしはプーセくんをエルの旦那様にするつもりはないのよ』
「え?」
『巷では月の真珠をプーセくんが持っていたから、エルの旦那様になるって報じられているけど、ネックレスひとつで運命は決められないわ。
プーセくんが持っていた月の真珠が偽物だと気付いていたけど、
エルを幸せに出来るのなら偽物でも本物でも関係なかったの。
旦那様に必要なことは、どれだけ一途にエルのことを大事に出来るかだったのよ』
わたしをどれだけ一途に大事に出来るか確かめるため、プーセが持ってきた偽物の月の真珠を本物だと言った。
確かめるだけに本物だと言うなんて…お母様ってば大胆だわ。
『……改めて、皆様にご報告があります。
こちらにいるシエル・セレーネくんは、
DNA鑑定の結果や月の真珠を持っていたことから、
リュンヌ王国王子とあたくしは認めます』
戦争により滅びてしまった、親交のあった国。
リュンヌ王国の王子様が生きていたという事実に、国民は拍手をしていた。
前髪を上げているシエルは、恥ずかしそうにはにかんでいた。