心に届く歌
☆シエルside☆
エル様が、静かに『心の歌ー表ー』を弾き出す。
何で……僕にあの歌を歌えと言ったのだろうか。
「……シエル、歌って」
エル様からの合図が来る。
僕はゆっくり歌いだした。
『♪
太陽と月が巡り合う時
そこに生まれるのは優しさ
この歌が国中に響きますように――』
歌っていて気がつく。
エル様の弾くピアノと、歌が合っている。
まるで、曲と歌…ふたつセットでも言うように。
「……シエル、歌って」
『♪
光と闇が見合わせる時
そこに生まれるのは未来
この歌が国中に届きますように――』
ここまでしか知らなかった。
だけど、不思議とその先の歌詞も出てきた。
「シエル」
『♪
あなたと僕が手を繋ぐ時
そこに生まれるのは愛情
この歌が世界に響きますように――』
エル様の奏でる曲が間奏に入る。
以前1番好きだと言っていた部分。
曲がこの先どうなるかわからない。
だけど、どういう音程で歌えば良いのかは自然と分かった。
『♪
この歌が心に届きますように――
この歌があなたを幸せへ導きますように……』
心地良い曲が終わりを迎えると同時に歌もやむ。
エル様が鍵盤から手を離した瞬間、盛大な拍手が響き渡った。