心に届く歌
「エル」
「あっお母様!」
わたしは伴奏を止め立ち上がろうとした。
でもお母様は首を振った。
「そのまま弾いてちょうだい。
エルのピアノ、聴いているの好きだわ」
「じゃっお言葉に甘えてーっ」
わたしは上げた腰を再び下ろし、弾くのを止めた部分から弾き始めた。
お母様は傍らに座り笑みを浮かべながらわたしのピアノを聴いてくれた。
「素晴らしいわエル。
あなたはピアノの天才ね?」
「お母様大袈裟よー」
弾き終わるとお母様が拍手をくれる。
嬉しい半面天才と言われると照れる。
「でもねエル。
メイド長から聞いたわ。
あなたまた木に登ったの?」
浮き上がった気持ちが一気に下がる。
わたしは溜息をついた。