心に届く歌
「エル。
あなたは我が王国の次期国王様なの。
あたくしと同じお妃じゃなくて国王様。
お父様と同じ立場になるのよ。
そんなあなたが木登りだなんて、また反発者が増えるわ」
「だってあの木大きいでしょ?
登ると中心街が見えるから大好きな場所なんだ」
わたしが住む家は
国の中心街から少し離れた小高い丘の上に建っている。
家を囲む塀が高くて見ることは出来ないから、
小さな頃のわたしが見つけたのがあの木。
わたしが生まれた時に記念に植えたという木は
わたしと一緒に育ってきたいわば幼馴染。
登ると中心街が見えるからお気に入りの場所なのに、
わたしの次期国王反対の反発者が増えるからと、
上った数日間は色んな人から「駄目」と言われてしまう。
わたしはソレイユ王国の次期国王だからって。
その自覚を持ちお嬢様らしく行動しなさいって。
耳にタコが出来るわよ……まったく。