オオカミくんのトリコ
「行ってきます」




「行ってきます、お母さん!」




朝ご飯を食べ終わって20分程。私達は家を出た。




「おいノロマ、さっさと歩け」




「これでも急いでるんです!!」





「ハッ、これだから足の短いチビは」





朝陽は余裕で170cm越え。私は160cmジャスト。





「…日本人女性の平均超えてるもん」





朝陽が無駄にでかいだけじゃん。






「何か言った?」






朝陽はさっきまでと別人のように優しい声で、笑顔で言った。






うわ……王子様モード。





「なんでもない。先行くからね」





私たちが幼なじみであることは学園内の人は知らない。もちろん同居のことも。



知ってるのは……





「羽衣ー!!おっはよー!」





「結衣ー!!おはよう!」



私の親友、草野結衣(くさのゆい)。






「あれ?王子は?」





そう、彼女は私と朝陽の関係を知っている。




「朝陽とはいつも途中から時間ずらして登校してるの、結衣も知ってるでしょ?それに朝陽は駿くんと行ってるし」





「あー、‟西棟の王子”(プリンス)?」





「そう」






西棟の王子こと、朝陽の友人の赤羽駿(あかばねしゅん)。






「西棟の王子と東棟の王子がセットとかサイコー!!」






そう、駿くんは2年B組だから私と朝陽と結衣のいる2年F組とは校舎が違う。



二年A組からD組は西棟、E組とF組は東棟。





駿くんも朝陽に負けないカッコよさで、駿くんは“西棟の王子”、朝陽は“東棟の王子”って呼ばれてる。




裏表が激しすぎる朝陽とは違って駿くんはいつでもニコニコしていて優しいんだ。…ちょっとチャラいけど。
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