約束のキミを。


私とレンは、たくさん話した。まるでこれからのぶんを補うかのように、小さい頃の話とか、サッカーの話とか、くだらない話をして、チョコレート食べたいねなんて言って笑った。






そして、いつの間にか私達はそのまま夜空の下、身を寄せ合うようにして、眠ってしまった。

寝る直前に
「みくに会えてよかった。」


って、聞こえた気がした…。

















目覚めると私ととレンに、勝くんのいつも使っているジャージが掛けられていた。

きっと、夜中にわざわざ心配して来てくれたんだろうなと思うと、優しい気持ちになった。

屋上の朝は、いつもより朝日が眩しくて、清々しい。隣でまだ寝ているレンを起こさないようにしながらしばらく、朝日を見つめた。


「うぅー。朝っ?みく、おはよー」

いつの間にか、レンは、眠たそうに目をこすりながら目を覚ます。

「レンよだれの跡ついてる」

私は、ふふっと笑う。

「みくこそ、髪はねてる。」

と、私の前髪を引っ張る。

二人で、言い合った後、しばらく何もせずまた、二人で朝日を見つめ、屋上から降りた。



「二人とも夜どこいってたの?」

病室の前には、体の大きな看護師主任が眉間にシワを寄せ、立っていた。

「二人とも、ここは病院なの?わかる?夜何かあったどうするの?心配させないで!

それに、屋上なんか行って風引いたらどうするの?

なんのための病院かわからないでしょ?」

長々と看護師さんは巻舌でお説教する。私とレンは、顔を見合わせて苦笑する。困ったねって心の中でレンに言った。

「すみませんでした」
と、頭を下げ結局15分間怒られ続けた。


病室に入っても、今度は、レンのお母さんが仁王立ちしていて「今日退院なのに準備もしないで何してたの?」と、プンプン怒っていて、レンは、またか…。という顔をする。

私はそれを横目に見ながら、勝くんに近づきジャージを渡した。

「勝くんありがとう。優しいね」

レンのお母さんが怒っているから邪魔にならないよう、小声で言って笑った。

「別に…。」
と、素っ気なく言っていたけど、若干、顔が赤くなっていてなんだか可愛らしかった。




お説教が、終わった後退院の準備を手伝う。レンは、思ったよりも荷物が少なかった。



あっというまに、片付けは終わりなんだか、スカスカになったレンのベッドは寂しかった。

そして、病室の、先生が来てレンのギブスが外される。


レンは、はずしてもらった途端ピョンピョンと跳ね、嬉しそうに笑った。
なんだか、子供みたい…。子どもだけど。







< 38 / 64 >

この作品をシェア

pagetop