約束のキミを。

和斗の白雪姫

「美空!」

和斗が一週間ぶりに現れた。一週間会わないことなんて前にもあったけど、レンが、いなくなって寂しかったからいつもより来てくれた嬉しさが二倍だった。

「和斗!最近来てくれないから、寂しかったー!」

私が笑いながら言うと、和斗は私の、頭をガシガシと撫でてくれた。

「ごめんな!あのさ、会わせたい人がいるんだいいか?」


会わせたい人?

和斗がそんなこと言うのは、初めてで驚いてしまう。

「うん…。」

出来れば、久しぶりに和斗と、ゆっくり話したかったけど黙ってうなずいた。

「呼んでくる」と、和斗は病室を出ていく。




え…。












驚いた。







病室に入ってきたのは白雪姫だったから…。








かわいいと有名な和斗の高校の制服。紺のジャケットのブレザーに金の紋章が入っていて、胸には大きなリボン。それに落ちついた赤と緑の膝丈プリッツスカートからは、真っ白で細い足が伸びていた。

胸よりも長い、漆黒のストレートの髪に、顔の横の一部だけ、三つ編みを垂らしていてしていて、胸のリボンと合わせた小さな赤いリボンで結んでいる。

化粧している風でもないのに、小さな顔を雪のように白く、それが際立たせるように大っきな黒い目。それを縁取るような、長いまつげ。
血のように赤い薄い唇。



あまりにも、綺麗で瞬きすら忘れてしまいそうになる。





彼女はニッコリ笑うと

「いきなりおしかけてごめんなさい。

私、雪村 舞(ゆきむら まい)って言います。
和斗ととは、小学校から一緒で、今は和斗と同じ水泳部でマネージャーをしてます。
あと、生徒会も一緒だね。よろしくお願いします。」

柔らかくでも甘い感じのする声だった。


どうして、この人が急に?


和斗とは、学校の話をしてくれるけど、個人的なことは話さない。

私を寂しくさせないために、個人名は出さないし仲のいい人の話もあんまり聞かせてくれない。だから、この人の事を知らなかった。


チラリと、雪村 舞さんが和斗を見た。白く綺麗な頬は、ほんのりと赤くなっていた。

その視線に気づいたのか、和斗も照れたような顔をしながら私を見る。

「美空…。俺達付き合ってるんだ。」

雪村 舞さんは、はにかんだ。


えっ…。 


ツキアッテル?



つきあってる…?



付き合っている…!?





私は、いきなりの事で、戸惑って口の中がパサパサになっていく気がした。


「ぃ…つから…?」

カラカラの声で、やっと絞り出した。


「夏休みの途中からくらいだから、約一ヶ月前からかな。」

和斗も、照れているのか指で頬をかきながら言う…。


なんだか、見ていられなかった。彼女作ればいいのにって思いながら、実際連れてこられると、苦しいような胸の奥が締め付けられるような、焦るに近いような感情が湧いた。


大事なお兄ちゃんを奪われてしまった妹はこんな気持ちなのかな…。


「和斗!美空ちゃんかわいいっ!お人形さんみたい!かわいすぎる!!和斗から話は聞いてたけど、ここまでかわいいなんて…。」

雪村 舞さんは、ニッコリと笑う。笑うとえくぼができる感じが、いい人そうな雰囲気を出していた。

「言っただろ?美空は、俺の自慢だから。でも、舞、驚きすぎ。」

和斗が苦笑する。
親しげに名前を呼びあっている様子がなんだか、ムカついた。




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