約束のキミを。

乃愛side


☆.。.:*・゚☆乃愛Side☆.。.:*・゚ ☆



ムカつくー!!!なんなのあの子!

あたしは、みくとかいう子の病室を飛び出して、叫びたいような衝動に駆られた。

カツカツとヒールの音が、静かな廊下に響いた。




ドンっ

誰かにぶつかる。

顔を上げると、そこには雪村 舞が花を持って立っていた。

「ごめんなさい…。あっ!美森 乃愛ちゃんよね?久しぶり」

そう言って微笑む姿はいかにもいいところのお嬢様感が出ていた。

「もしかして、美空ちゃんの友達だったの?」

病室から勢い良く出てきたあたしに穏やかに聞いてきたけど、
あたしは
「いえ、違います。」

とだけ答えて、立ち去った。

雪村 舞は、小学校が一緒だった。西園寺和斗と雪村舞は学年は上だったけれど、学校創立以来の美男美女として有名だった。

その二人ともが有名私立の中高一貫校に通うことになり、その次の年から二人のファンが二人を追って私立受験をする人が増えたらしい。

そんな、雪村 舞が私のことを覚えているのは意外だった。

雪村 舞は、今でも美貌は健在で、文化祭のミスコンで去年優勝し、クイーンとか、白雪姫と呼ばれていると噂が流れているし、最近和斗と付き合いはじめたというのも耳にしていた。

和斗の事を、追っかけていた女子はうちの高校にもいて、付き合いはじめた時はちょっとした騒ぎになったけど、相手が雪村 舞ならしかたないとみんな諦めた。

確かに、雪村 舞は綺麗だと思う。

ただ、私が負けてるなんてとても思えない!だって、あたしも、かわいいから。

あたしは自分のかわいさに自信があった。

なのに…。今日驚いた。あんまりにも『みく』という女が綺麗だったから。

正直、レンが病院で知り合った子なんてすごく地味で、暗い感じでレンは同情して友達になったんじゃないかと思った。レンは優しいから。かわいそうな子を放っておけないタイプだと思う。





違った…。私は、負けたと思った。



だって、小柄で腰よりも長いブロンズ色の髪と透き通るほど透明感のある肌。
陰りのない大きな目。桜の花びらを付けたかのような薄くて綺麗な唇。すべてのパーツが完璧な場所にあって、はっきり言って同じ人類なのかと疑わしいレベルの可愛らしさだった。

上から下まで欠点を見つけようとしたけれど、見つけられずただ、ボソリと「地味ね…。」と言えただけだった。



レンはなんであの子なんだろう…。

レンは、見た目で人を判断したりしない。

あの子は、とても幸せそうじゃない…。


あの子のベッドの横には写真が置かれているのを見てしまった。

一枚は、レンとあの子と、さっきあの子をかばうようにしていた男と小さな女の子の写真。

二枚目は、あの子が兄弟であろう二人の男の子の誕生日らしき写真だった。ケーキの前で、吹き消そうとする兄弟にあの子が挟まれて、カッコいい父親と綺麗な母親が後ろに立って微笑んでいる写真だった。

三枚目は、西園寺和斗と雪村舞と三人でとった写真。

どの写真も幸せそうに笑っていて、ムカついた。

私よりもかわいくって、レンがいなくても守ってくれる男がいて、家族がいて、雪村舞とか西園寺和斗とも知り合いで会いにきてくれるのに、あの子は、何を望む必要があるんだろう。

あたしは、小さい頃からレンしか望んでない。

あたしは、レンに見て欲しくてオシャレを頑張ってるし、肌のケアとかも欠かさずにしている。

可愛くなる努力をしている。だからこそ、私は自分のかわいさに自信を持っている。

レンに見て欲しくて、他にレンと仲良くする人を許せなかったりする。

誰よりもあたしはレンを思ってるし大好きなの…。


だから、元々かわいくて、人に好かれている子が許せなかった。

だって、ただ何もせずにレンを待つなんて、おとぎ話に出てくる王子様を待ちわびる、お姫様みたい。

あたしは、シンデレラストーリーなんて、信じない。

本当に、大切で欲しくてたまらない相手がいるのなら、待つだけなんて耐えられないはずでしょ?


あたし、お姫様になんてならなくっていい、汚い手を使ってでも手に入れたいほど好きなんだから…。





なのに、最近のレンは私を見てくれない。
私と話していても、私を見てない。

気づきたくもないのに、なんとなく、気づいてしまう。
大好きだからわかるんだ。



















レンは、あたしを望んでないことを…。



















それでも。それでも。あたしはレンの側にいたいから邪魔するような、女は許せない…。




病院の外に出る。

思ったよりも寒かった。




体も心も…。


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