約束のキミを。

好きの気持ち

乃愛さんが去っていて、勝くんと病室に残される。

「あのさ…。」

私が口を開きかける。

ガラガラ

さっき閉まったばかりのはずのドアが再び開いた。私と勝くんが振り返ると、そこには舞さんが立っていた。

「あれ?こんな入り口に二人で突っ立て何してるのー?」

キョトンとした顔で聞かれる。

勝くんが、私の背中ををぽんっと押した。

『戻れ』というように、私は、しかたなくベッドに戻る。

勝くんも、自分のベッドへ入った。

舞さんは、私の横の花瓶を今日も取り替えてくれる。

花を生けながら、舞さんが聞いてきた。

「乃愛ちゃんさっき来てなかった?」

「知り合いなんですか?」

「うん!小学校一緒だったの。かわいい顔してるし男の子にモテモテだったよー。
でも、乃愛ちゃんはレンくんしか見てないみたいだったけどね。
レンくん大好き過ぎてけっこう有名だったよ」

苦笑いしながら、言った。

「そうなんですね…。舞さん…。好きってどんな感情ですか?」


俯きながらつぶやいた私に、舞さんはえっ?と声を漏らした。

「どうしたの?急に…。」

「好きってなんですか…?恋ってなんですか?
舞さんは、友達としてじゃない好きをどうやって知ったんですか…?」

私は、真剣だった。顔を上げてじっと舞さんを見た。

舞さんは、驚いた顔をしたあと、肩をすくめてた。

「恋ってね。気づいたら落ちてるの。頭の中がその人でいっぱいになっちゃたり、なんでもその人のこと知りたくなっちゃったり、他の子と仲良くしてると悲しくなっちゃったり、かわいいと思って欲しくなったり、会いたい気持ちが抑えられなくなったりっ………………。

うわっ。なんか恥ずかしい!!。」

最初は淡々と言っていたのに、自分で言っているうちに恥ずかしくなったみたいで、顔がゆでダコ状態になっていた。

「でも、恋って素敵だよ。誰かに愛されるのも幸せだけど、誰か人に特別だと思える人に愛を注げるって幸せじゃない?」

そう言ってくすぐったそうに笑う舞さんは、幸せそうで綺麗だった。きっと、和斗を愛し愛されてるからかな…。

「ありがとうございます…。」

「美空ちゃん…。もし、乃愛ちゃんになにか言われたなら気にしなくっていいよ。大丈夫だからね。美空ちゃん困ったことがあったらいつでも言ってね!あと、好きな人が出来たら、私に報告すること!」

そう言って、舞さんは、右手の人差し指をピッと立てて微笑んだ。

「はい…。」

「よろしい!今日ね、この後用事があって…。今日は、早めに帰らなきゃいけないんだ…。髪の毛もしてあげられなくてごめん。」

花をもう一度しっかり整えて、舞さん病室を出て行った。



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