約束のキミを。

ふぅー…。

小さなため息をつく。

ボォーと外を眺めると、やっぱりそこにはいつもと変わらないつまらない風景があるだけだった。


恋愛的な意味で好きなの？

優しくしてくれたのがたまたまレンだったからじゃない？




頭の中でぐるぐるとあの子の声が鳴り響く。








頭の中がその人でいっぱいになっちゃたり


なんでもその人のこと知りたくなっちゃったり


他の子と仲良くしてると悲しくなっちゃったり


相手にかわいいと思って欲しくなったり、


会いたい気持ちが抑えられなくなったり…。


私は、どうなんだろう…。


確かに、今、私の頭の中はレンでいっぱい…。


だってしかたないでしょう…。会いにきてくれないんだもん！



確かに、レンの事なら知りたい…。

私は知らないことばかりだから、レンがサッカーをしてない理由も、屋上で流星群を見たと言っていた友達があの子なのか聞いてみたい…。知りたい！！




気になっちゃうでしょ？

確かに、他の子と仲良くは気になる…
でもそれは、美森　乃愛さんはかわいいし幼なじみらしいし、仲良くて当然だけど、突然あんなフィアンセ宣言されたら気になるのは当然でしょう！変な気持ちになったのもそのせいでしょ。



確かに、レンが退院する日、一番かわいい服を着たけど、それはお別れだからでしょう。しかたないよね…。　












ダメだ…。






どんなに、否定してもダメだ…。


『会いたい気持ちが抑えられない』

これは、否定しようがない…。


だって、会いたいもん！会いたい！会ってもっと話したい！たくさん話してあの子よりももっと、レンのことをわかりたい！あの子よりも特別でいたいよ！！





特別…。



私の中で、レンは元から特別だった。

この特別って……。









うそ…。




私…。











私は、初めての気持ちにどうしたらいいかわからなくって、もう悲しいような恥ずかしいような不安な気持ちになる。







認めてしまうのも怖くって、逃げ出してしまいたくなる…。

私は、無意識に立ち上がると病室のドアのノブを右手にとっていた。



「おい！」

左腕を掴まれる。

「勝くん…。私っ…。」

グイッと引っ張られ、倒れ込むように勝くんの胸におでこがぶつかった。そのまま抱きしめられる。

「大丈夫か？」

「心配してくれてありがと…。大丈夫だよ…。だいっ…。」

頬に涙が流れるのを感じる…。

おかしいな…。泣くつもりなんてなかったのに…。


嗚咽が交えて、ヒクッヒクッと言いながら泣いてしまう。

「勝くん！！私…」

「ん？」

「レンに会いたいよ！！会いたいっ…。」

「そうか…。」

「会いたいんだよ…！！」

「うん、わかってる。」

私は、ギュッと勝くんの腰に手を回して、服を握った。

「私…っ…。私…。レンが好き！大好き！！嘘つけないよっ…。好きだよ…。」


勝くんは、ギュッと抱きしめてくれた。


「そうか…。」


勝くんの、すべてを受け止めてくれる、優しいあいづち。どんな言葉を重ねて言われるよりも、勝くんの、言葉が一番私をわかってくれている感じがする…。


今日、レンに会いたい！退院してから、初めて口に出した。
そして、今日誰かに初めて恋をする気持ちを知った。

知りたくなんてなかった…。だって今さら遅い…。


『その程度の関係だったのよ』

あの子の言葉を思い出す。

私は、その程度なんかで終わりたくないよ…。

「勝くん…。私待ってていいんだよね…？」

勝くんは、答えてはくれなかった。

ただ、そっと私の頭をなでた。