約束のキミを。
第10章~言えない別れ~
前夜
あっという間に時間は過ぎて、勝くんの退院が明日へと迫っていた。
朝目が覚めて、窓のカーテンを開ける。
うん!大丈夫だ!
くるりと振り替えると、勝くんが眠たそうな目でこっちを見ていた。
「おはよー!」
にっこり微笑む。
「はよ。お前もう大丈夫なの?」
「うん!勝くんのチョコレートムースのおかげかな?もう平気!」
勝くんは、少しほっとしたような顔をして
「よかったな。」
と言った。
「やっぱり、勝くん初めて会った頃より表情が柔らかくなった!今の方が好きだよ!」
勝くんは、驚いた顔をしたあと目を伏せる。
「そうか…。」
とだけ言って部屋を出ていこうとする。
「待って!」
勝くんの着ているTシャツの袖をつかむ。
「明日の午前中には退院の手続きするんでしょ?なら、今私と遊ぼうよ!」
「お前、病み上がりだろ。」
「でも…。」
袖口をぎゅっと力を込めて掴む。
勝くんは、くすっと笑うと
「子どもか!あのチビみたいだな。」
あのチビ…。千奈ちゃんのことか…。
「四歳の子と一緒にしないでよー!」
そういいながら私をおいて病室を出ていく勝くんの背中を追いかけた。