とまとの日
第1章 風の午後
何気なく見た景色は、いつもと変わらず。
ただ、少し違って見えたのは昨日買い換えたメガネのせいかもしれない。
「なんで朝ってすぐ来んのかなー。」
と呟くツカサに、
「寝るのが遅いんだよ。」
と、背後から鋭くツッコミを入れてくるのは、
昨日から泊まっている友達の藤澤冬馬だ。
冬馬は、大学に入ってすぐに1人で歩いてた俺に突然体当たりしてきた変わった奴。
体当たりしてきたくせに、
「友達になってやるよ!!」
と満面の笑みで言い放った。
信じられない。なんだこいつは。ないない、無理無理!!と思ったのを今でも覚えている。
そんな最悪な第一印象から、家に泊まる程仲良くなったのは、今でも不思議だ。
「つぅかぁさぁ〜、朝ご飯出来てるから食べましょう。」
彼女のようにわざとじゃれつく冬馬を無視して朝ご飯を食べる。
ご飯、豆腐とわかめの味噌汁、鮭の塩焼きに大根の煮物。ほうれん草のお浸し。理想の朝ご飯
だ。こいつが奥さんだったら幸せだろうなと思いつつ黙々と食べる。そして、うまい。
「じゃ、俺サークルあるから行くわ!」
と食事を済ませると冬馬は家を出て行った。
1人残った俺は洗い物をした後、またウトウトとし眠ってしまった。

ふと心地いい風に目を覚ました。いつもの景色を見ると赤い風船が飛んでいくのが見えた。
その下を覗くと、女の人が空を見上げて立っていた。うっかり目が合ってしまった。急いで目を逸らした俺は、一瞬感じた違和感を確かめるかのようにもう一度女の人に手をやると、そこにはもう彼女の姿はなかった。
風の強い昼下がりの出来事だった。
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