地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜



「ただいま」


「お帰り玲美、陽くんとは話はできた?」


「話はしたけど合鍵を返してきた。もう私達は終わりだよ……」


「じゃあ元カノが言ってた事は本当だったの?」


「元カノの事は話してない。自分で考えなさいよって言った」


「えっ?一番重要な事を言わなかったら話にならないじゃない。元カノが言ってたのが噓って事もあるんだし、それを言わずに合鍵を返すなんて陽くんからすれば納得がいかないんじゃないの?玲美もさ、ちゃんと話さなきゃ明日はクリスマスじゃない?私は元カノの言葉よりも陽くんの話をちゃんと聞いた方がいいと思うよ?だって水族館の時も勘違いだったじゃない」


それを言われてしまったら何も言い返せないでいた。


「家に泊まるのは今日までね?明日はちゃんと話しなさいよ?」


「……」


凪にそう言われると説得力あるけど、暫く会わないと言って合鍵を返した以上、私も引き返せない。


明日は陽に内緒にして予約していたケーキを取りにいって一人で家で食べよう。


凪はもう陽との事は言わなくて、普通に過ごした。


朝になり、凪と貴之にお礼を言って会社に向かった。


あれから陽からラインで【話がしたい】と送られてきたが、私はそれに返事をすることはなかった。


陽もそれ以上は何も言ってはこなかったけど。


会社に着いてからも陽が私を見ている視線を感じたけど、私は目を合わせることなく仕事に集中した。


今日は何とか定時に終わり、仕事が終わると逃げるようにして会社を出た。


車に乗って帰りにケーキ屋さんに寄りケーキを受け取り、スーパーによって惣菜のオードブルと缶ビールを買って久しぶりに家に帰った。


まずは掃除をしてお風呂に入り、冷やしていた缶ビールを飲んだ。


だけど何だか虚しくて、テレビを付けて買ってきたオードブルを摘みに飲んでいたが、何だか味がしなかった。


ケーキも一人じゃ全部は食べれないしな……。



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