地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
「それより私の指のサイズよくわかったね?」
「寝てる時に紐で結んでたからそのサイズに合わせて貰ったんだよ。凄いだろ俺?なぁ玲美、これからはさ逃げずに何かあったらちゃんと話してくれないか?さすがに今回は焦った。昔からの願いがやっと叶ったのに……」
「ごめん……でも昔からの願いって?」
すると陽は懐かしそうな顔して言った。
「前に玲美にさ、俺を好きになったら俺が玲美を好きな理由を話すって言ったの覚えてる?玲美は忘れたかもしれないけどさ、玲美と俺が出会ったのは俺が入社するよりもまだ昔の事なんだ」
昔?でも陽みたいな人と出会っていたら忘れないと思うんだけどな?
私は陽の次の言葉を待った。
「俺が五歳の時、俺が姉貴と一緒にこの公園で遊んでたら玲美が来たんだ。近くに引っ越したばかりだったし俺はまだ保育園に行ってたから近所に友達が居なくてさ。それで玲美が俺達を見て一緒に遊ぼうと言ってくれたんだ。姉貴が小学校に転校したのを知っていたのかそんな話をしていたのを今でも覚えてる。俺にも優しくしてくれてさ、俺は玲美に会いたくて毎日公園に行ってた。毎日は会えなかったけど、玲美が公園に来た時はいつも一緒に遊んでくれてさ。だけど三ヶ月後にまた親父の転勤が決って引っ越さなきゃいけなくてさ、玲美と離れるのが子供ながらに嫌だった。この気持に気づいたのは小学生になった時で、俺の初恋は玲美だった。」
えっ、私が初恋?
「確かに彼女も居たし、女とも遊んだりはしたけどさ、何故かあの頃の玲美の姿も声も忘れられなくてさ、大学に行って就職活動する時に玲美の住んでる近くで就職したら会えるかもしれないと思って就職したら奇跡的に玲美に出会ったって訳。一目見て玲美だって気づいた。あの頃より綺麗になってるけど、子供の頃の面影が残ってたし、名前で玲美だって確信した。地元から出て正解だって思ったけど玲美は山岡主任しか見てなかったし、どうにかチャンスないかなって思ったらチャンス到来したんだけどな。それに初恋だけで玲美を好きになったんじゃなくて、玲美の人柄にも惹かれた。俺さ玲美をこの先もずっと幸せにするからもう、俺から離れるなよ?」
「うんっ、だけど陽はいつまで地味男を演じるつもりなの?」
ずっと気になっていた。
もう隠す必要はないんじゃないかって。
「じゃあ俺が得意先でもモテモテでも玲美はいいのか?」
「それは……」
「ハハッ、俺の素顔はこれからも玲美の前だけしか見せないし見せるつもりもない。俺は玲美を裏切らない。だから俺を信じてくれ」
「はい」
ずっと昔に出会った私達。
私は覚えていなかったけど陽はずっと覚えててくれた。
いつも自信もなくて逃げてばかりだったけど、陽の言葉でこれからは何でも話をして、喧嘩をしても陽とだったら乗り越えられると思う。
これから先もずっと……
【完】