地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜



会議室に入ると俺は鍵を閉めた。


それを見たのか玲美は少し落ち着かない様子で俺に伺った。



「は、話って……何?」


「玲美さんさ、山岡主任と不倫して幸せなの?」


「えっ……どうして」


「さっき見たんだよね、二人がキスしてるの」


俺は山岡主任とのキスの事を告げると、驚いた顔をしたと同時に、焦りを感じていた。


「別に人に言ったりしませんよ、ただ……」


「ただ……?」


「俺が残業を頼んだら残ってもらっていいですか?時間は何時になるかわかんないですけど」


卑怯かもしれないけど、俺はこのチャンスを逃したくなかった。


「わかった……」


玲美返事を聞いた俺は、玲美の気持をしりたくてさらに言葉を続けた。


「一つ聞きたいんだけど、何で山岡主任なわけ?既婚者好きになっても先の未来なんてないだろ?」


俺の口調が変わったのに驚きを隠せない表情をしながら、ただ俺を見つめるだけの玲美に更に俺は言葉を続けた。


「二人の関係はキスをしてるのを見る前から気付いてた。それに俺から見れば玲美さんは山岡主任に依存してるようにも見える。そこまで好きになる理由は何?もしかして初めての男だったとか?」


「……」


俺の言葉を聞いた玲美は俯いた。
マジか……まさかアイツが初めての男だったとはな。
俺は自分の感情を押し殺したが、アイツをぶん殴ってやりたかった。


「へぇ、図星なんだ?じゃあ山岡主任しか男を知らないんだろ?」


そう言って俺は玲美との距離を縮めてくる。


「玲美さんさ、依存してるって自覚してる?依存するほど好きになるのは、俺だけにしてよ」


「えっ……?な、何言っ」


そう言いかけた玲美の唇を俺は塞いだ。


驚いていた玲美だったが俺の体を押し返し、離れてから俺に言った。


「私は年下なんて興味ないんだからっ!勝手な事を言わないで」


「じゃあ興味のない俺の事を、依存するほど好きにさせてやるよ」


そう言った俺は何事もなかったように会議室を出て行った。


これが俺と玲美の始まりで、この日から俺は玲美にキスをしたり、デートに誘ったりして玲美の心を揺さぶった。



< 109 / 114 >

この作品をシェア

pagetop