地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
少しずつ商品を手に取り、オフィスに戻っては画像を撮り込みチェックをして、商品登録がないのは登録をする作業に取り掛かった。
三十分が経過した時点でもう嫌になり、私はコーヒーを飲む事にした。
アシスタントの皆はもう帰っていて、オフィスに残っているのは係長と山岡主任と私だ。
後で笹山くんも帰ってくるみたいだけど、この忙しい月曜日にこんな事をしなければならないなんて……。
だけど得意先に出さなきゃいけないし、山岡主任のアシスタントをしていた時も残業して手伝ったりしていたし、私だけじゃなく同じアシスタントの人はこうして営業の手伝いをするのが仕事だ。
給湯室でコーヒーを入れてると、山岡主任がやってきた。
「玲美」
そう小声で言って私を後ろから抱きしめた。
「山岡主任……」
山梨さんに嫉妬してたけど、山岡主任がこうして抱きしめてくれるだけで不安が消える。
私は彼さえ側に居てくれたらそれでいい。
これを笹山くんが言っていた"依存"というのだろうか。
今の私には例え山岡主任とは不倫の関係だとしても、私にとって彼が全てなんだ。
「今日は遅くなるのか?」
「うん、棚割り用の画像を撮ってるけど、数が多いから時間が掛かりそう」
「そっか……俺はもう少ししたら帰るけど、無理するなよ?冷蔵庫に玲美にプリン買って冷やしてるから後で食べろな?」
そう言って軽く私にキスをして、頭を撫でて自分の机に戻って行った。
やっぱり彼は優しくて、私の心を縛りつける。
だから嫌いになれないんだ。
私はコーヒーを飲むと自分の机に座り作業を開始した。
三十分後には山岡主任が帰り、係長が残っていた。
他の営業はそのまま直帰するらしく、笹山くんも後少しで帰ってくるみたいだけどね。
「高瀬ちゃん、俺そろそろ帰るけど一人で大丈夫?笹山が後で帰ってはくるけど」
「大丈夫ですよ」
「それって、新商品の画像を撮ってるの?」
「はい、新規オープンの棚割りを作るみたいで、新商品の画像がないから撮ってるんですよ」
すると係長の表情が一気に明るくなった。