地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
いつも弱々しい係長の表情に私は一瞬引いた……。
「良かった、来週俺も得意先の棚割りを新しく作らなくちゃいけなかったんだ。リニューアルオープンするから。若槻(わかつき)ちゃんに頼むと凄く怖い顔をするから頼みにくくて、一人で残業して画像を撮らなきゃならないなって思ってたからさ。あぁー助かった、ありがとう!コレ良かったら食べて、じゃあお疲れ様」
そう言って私に飴を三個渡して係長は笑顔で帰って行った。
若槻先輩は係長のアシスタントで、年は私の二つ上なんだけど、ハキハキした人で弱々しい係長はいつもビクビクしている。
私は若槻先輩は大好きだし話しやすい。
多分、若槻先輩が怖い顔をするのは係長か小声でモジモジしてるからだと思うけどね。
私はせっかく係長に飴を貰ったから、イチゴ味の飴を口に入れた。
疲れてるから甘くて美味しい。
もうひと頑張りしたらプリンでも食べよう。
そう思っていたら笹山くんがオフィスに戻ってきた。
「お疲れ様です」
「お疲れ様……」
そう言って笹山くんは私の隣の机に荷物を置いた。
笹山くんはスーツの上着を脱ぎ、ネクタイを緩めているのが視界に入った。
いつもはちゃんと着ているスーツだが、そんな姿ははじめてだ。
彼はトイレに行ったみたいで、私は画像を撮るのに集中していると、トイレから戻ってきた笹山くんが私に話しかけてきた。
「ちゃんと残業してくれてたんだ?」
「だって笹山くんが……」
私は彼の方を見て一瞬言葉が詰まった。
だって彼の姿は眼鏡を外していて、髪型もいじったのか地味男の姿から凄いイケメンに変化している。
私は夢を見てるの?
まるで別人の彼の姿をただ見つめるしか出来なかった。