地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜



「玲美さんさ、俺に見惚れてんの?」


そう言った彼はクスクスと笑いながら私に近づいてきてハッとした。


「誰があんたな……」


そう言いかけたら笹山くんは私の顎に手を当てると上を向かせた。


「そんなジロジロ見られたら何しちゃうかわからないよ?」


意地悪そうにニヤリと笑う彼に言葉すらでず、年上で優しい山岡主任しか興味なくて、ドキドキするのも山岡主任だけだったのに、今は笹山くんの言葉と、やけに色気のある顔に、私はドキドキしている。


地味男だった笹山くんの裏の顔に、認めたくないのにドキドキしてしまう自分が悔しいくらいだ。


「べ、別に私は年下なんかに興味ないし……もっと大人な人しか魅力だって感じないんだから!」


「それは玲美さんが山岡主任しか見えてないからだろ?それに玲美さんって山岡主任が初めてみたいだし、他の男を知らないからそう言うんだよ」


何だか悔しくて、私は唇を噛んだ。


「そんなの笹山くんが一人で言ってるだけでしょ?山岡主任が初めてじゃないし……」


強がって私はそう言った。


「ふぅーん?山岡主任が初めてじゃないなら俺にキスしてみてよ?俺はそれなりに女と付き合ってきたし、セックスだって色んな女としてきたから玲美さんが俺に大人のキスを教えてよ?じゃあ納得するから」


「な、何言ってるの?好きでもない人とキスなんて出来るわけないじゃない」


「じゃあその好きな人は玲美さんも奥さんも同じように抱いてるのは許せるんだ?それもそうか、だってわかってて不倫してるんだし。イケナイ事していてキスは好きな人じゃないと出来ないなんて矛盾してるよ?それに玲美さんが誰とキスしようが山岡主任は何も言う権利ないし言えないだろ。好きな人としかキスできないとか、やっぱり山岡主任がキスもセックスも初めてだったんじゃないの?」


「だから違うってば」


私はつい剥きになって言ってしまった。


「剥きになればなるほど初めてだって言ってるみたいなもんだよ?」


何なのよもう!
初めてだったら何が悪いのよ。
確かに山岡主任しか知らないけど、キスは沢山したしそれなりに上手くなったと自分でも思う。
こうなったらキスくらいしてやろうじゃないの。
年下の癖に偉そうな態度で挑発はしてくるし、年上の意地を見せてやるんだから!


「わかった、キスすればいんでしょ?」


「へぇー、じゃあお手並拝見しますか」


本当生意気なんだから。
こうなったらヤケクソよ!




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