地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
次の日の朝、私はいつものように会社に行った。
山岡主任が居るだけで、一日頑張れる。
それに先月の私の誕生日に指輪をくれた。
その指輪を右手に付けて、寂しくなったら指輪を見ると落ち着いたりする。
彼はズルイ人だとも思う。
その優しさが、私が彼から離れられない理由なのかもしれない。
いつものように机に座ると、隣の机には地味男の格好をして出勤してきた笹山くんが座った。
「おはようございます。今日も残業お願いしますね?」
「わかってるわよ、まだ画像だって撮らなきゃいけないんだから」
「ありがとうございます。いつも玲美さんには感謝してますし、仕事がやりやすいです」
コイツ……本当にそう思ってんの?
昨日に彼の本性を知ってしまって、どれが本当の彼なのかわからなくなる。
入社して、大人しい彼とは大違いだ。
私はそれ以上は何も言わずに、パソコンのメールをチェックした。
「笹山、今日は引き継ぎの得意先を一緒に回るから午前中は同行だから、一時間後にら出るからな」
「チッ」
山岡主任と同行らしい笹山くんは、山岡主任の言葉を聞いて私にしか聞こえないくらいの舌打ちをし、私は彼の顔を一瞬見た。
「わかりました」
舌打ちをしたかと思えばやる気のあるような変事をする。
そして私をチラリと見ると一瞬だけニヤリと笑った。
絶対に私にだけ聞こえるようにわざと舌打ちをしたんだと思った。
本当に性格が悪い。
私の反応を見て楽しんでいるように見えて、憎たらしい……。
相手にしたら笹山くんのペースに流されてしまうから全部スルーしよう。
その後は電話対応に追われたり、FAX注文を見てメーカーに間に合うか連絡したりしていると、いつのまにか山岡主任も笹山くんもオフィスには居なかった。
いつもこんな風に毎日が忙しくて、終業時間までが早かった。
だけど私は今日も残業で、アシスタントの皆は仕事が終わり帰るのに、私は今から画像を撮り込む作業をしなくてはならないなんて……。
私は机から立ち上がり、給湯室の冷蔵庫を開けてプリンを手に取り会議室に向った。
残業する前に休憩しなきゃやってられないし、昨日に食べそこねたプリンを味わって食べよう。