地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
定番を発注してる山田(やまだ)さんは、貸した在庫は特売分で発注するから問題はないと言ってくれたが、間違えて入荷した四十ケースは売らなくてはならない。
他の営業の人もどうにか売れるようにするからと逆に励まされてしまい、私がちゃんと確認をしてなかったから皆に迷惑をかけてしまった事でかなり落ち込んでいた。
社内に戻って来た山岡主任は、私を見て言った。
「ミスは許されないけど、俺もしたことはあるし、高瀬(たかせ)さんもこのミスで次からは見直しもちゃんとしてくれればいいから、そんなに落ち込まないようにね?じゃなきゃまだ今日の発注書もあるから」
「はい」
山岡主任はそう言ってくれて仕事には集中したものの、休憩時間になると私は落ち込んでいた。
そんな私を見たのか、山岡主任は飲みに行かないかと誘ってくれた。
これも山岡主任の優しさだと思うと嬉しくて、一緒に飲みに行く事を承諾した。
私は仕事を終えると、一度家に帰った。
山岡主任は少し遅くなるみたいだし、シャワーを浴びて着替え、メイクをした。
それに私は入社して優しくしてくれる山岡主任の事を……好きになっていた。
でも彼には奥さんも子供も居る。
この気持ちは伝えてはいけないし、山岡主任よりも好きな人が出来るまで、それまでの間だけでいいから心の中で好きでいようと決めた。
それに私は今まで恋をした事はあるけど、彼氏が出来た事はない。
勿論、処女だ。
そんな私が恋をしたのがよりによって会社の上司で既婚者の人。
好きになってもこの恋が叶うことはないのに、それでも山岡主任が好きだから、自分の容姿に自身があるわけじゃないけど、洋服もメイクも気合を入れて、山岡主任に少しでも綺麗だって思われたかった。