地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
一人会議室の椅子に座りプリンを一口食べた。
あー美味しい。
幸せな気分に浸っていると、会議室の扉が開いて思わず体がビクッとなった。
振り返るとそこには笹山くんが居て、何故か鍵までちゃっかり閉めてこちらに近づいてくる。
人がゆっくり休憩しているのに邪魔者が来たせいで、ゆっくりプリンもたべられないじゃん。
「会議室に一人で何をコソコソしてるんですか?」
「コソコソ?コソコソなんてしてません!私は休憩してるんだから。それを笹山くんが邪魔しに来たんじゃない」
すると私の目の前に袋を差し出した。
「何コレ?」
「あげます、だからそのプリンは俺が食べるから」
そう言って食べかけのプリンを笹山くんは取り上げた。
「あぁっ、ちょっと」
私がそう言っても聞く耳もたずで私のプリンを全部食べてしまった。
せっかく山岡主任が私にくれたのに……。
私は笹山くんに貰った袋の中を見ると、ロールケーキが入っていて、このお店のロールケーキは美味しくて取材もくるくらいだ。
「えっ、食べていいの?」
「やったんだから食べてもらわないと買って来た意味がないだろ?それとも……俺が食べさせてあげようか?」
「け、結構よ」
そう言って袋からロールケーキを出して一口食べた。
「美味しいっ」
「それは良かった。じゃあ食べたらまた画像お願いしますね?」
そう言って立ち上がった笹山くんは会議室を出ようとした。
「笹山くん」
そう彼を呼ぶと振り返った。
「ありがとう」
すると彼は私に近づいてきて突然、唇の横をペロリと舐めた。
「ひやぁ、な、何するの!」
「ん?クリーム付いてたから舐めただけ。マジ旨いなロールケーキ。じゃあまた後で」
そう言って彼は会議室を出て行った。
な、何なのよもう。
変な声まで出ちゃうし、地味男の格好の彼にも心臓が飛び出しそうなくらいドキドキしてしまった。