地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜



次の日の朝、目が覚めると頭が痛くて、私も凪もなんとか用意をして家を出た。


家の前で凪と別れて会社に向かう。


昔に比べたらお酒も強くはなったけど、昨日は飲み過ぎた。
会社の駐車場に着いて車の中で痛み止めを飲んだ。


車から降りて会社まで歩いて行こうとしたら、前の方に山梨さんと山岡主任が何か話しながら歩いていた。


だけど今の私には嫉妬する元気すらない。
歩くのもきつい。


そんな私の真横に偽りの地味男がやってきた。


「おはようございます玲美さん」


「……おはよ」


「何で元気ないの?顔色が悪いけど、前の二人見て気分でも悪くなったとか?」


私と山岡主任の関係を知ってる彼からしたら、私が二人を見て嫉妬して、元気ないと思ったのだろう。


原因はただの飲み過ぎなんだけど。


「何でも山岡主任と繋げないでよね。昨日はあれから帰って友達が来て一緒に飲んだんだけど、飲み過ぎただけよ……あぁ気分悪っ」


「でもその酒は山岡主任絡みなんじゃないの?」


偽りの地味男は鋭い。
まぁ……それに近いけどね。


「じゃあコレあげる。飲んだら自然と二日酔いもよくなるしね」


「ありがと、てか何でこんなの持ち歩いてるの?」


「俺達は得意先のバイヤーによく誘われたりするから常備持ち歩いてる。皆持ってるしね」


確かに山岡主任も朝方まで飲まされた事があると聞いた事がある。
営業も大変なんだね……。


「回復してもらわないと、夜の残業できなくなるからちゃんと飲んどけよ?」


ニヤリと笑って言う偽りの地味男を私は睨んだ。


だけど効き目もなくスルーされてしまい、私達はそのままオフィスの中に着いた。


私は二日酔いに効く薬を給湯室に行って飲んだ後、朝礼を済ませて仕事に取り掛かった。


だがこんな日に限って発注書が多いし、朝から大忙しで、お昼になるといつの間にか二日酔いも良くなっていた。




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