地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
お昼になり今日は若槻先輩と一緒にご飯を食べた。
他のアシスタントの皆は急ぎの仕事があったりで、自分の机で食べたり、お昼をずらして食べたりするみたいだ。
「今日は煩いぶりっ子が居ないから静かだね?」
若槻先輩が言うぶりっ子とは、山梨さんの事だ。
「あはははっ、若槻先輩は相変わらズバズバ言いますね?私はあまり気にしてはないですけどね」
「私も気にしてないけどあの声が耳に聞こえてくるとイラッとしてしまう。最近は山岡主任に甘えたような声だしちゃってるし、裏では性格が悪そうだからあのタイプは私は嫌いなんだよね。だから必要以外の会話はしない」
山岡主任には特別甘えたような声で喋ってるかもしれないけど、メーカーさんでちょっとイケメンとかが来ると、誰よりも先に笑顔を振りまいて対応してたっけ?
若槻先輩が言うように彼女は男の人の前、特にタイプの人の前ではすごいぶりっ子を出してるかもしれない。
もしかしたら山岡主任の事もタイプなのかな?
「男の人はあんなぶりっ子がいいのかねぇ?私が男だったらシカトするけどね。それにもう一人、係長も男の癖に弱々しいしさ……」
「確かに係長は弱々しいからもっと上司としてしっかりして欲しいですね」
そんな話をしながらご飯を食べた後、私達が休憩室から出ようとしたら、慌てた様子の係長が入って来た。
「わ、若槻ちゃん、あの、えーっと……」
慌てて来たわりには次の言葉が出ずにモジモジしだした係長を見て、若槻先輩の眉間に皺がよったのがわかった。
「ハッキリ言ってくれなきゃわからないでしょ?うちの親と年齢かわらないし、上司なんだからあんまりこんなこと私に言わせないでくれます?」
「わ、若槻ちゃんごめんね。急で悪いんだけど……明日着でこの商品、発注かけてもらえるかな?」
ビクビクしながら発注書を若槻先輩に渡す。
「はぁーっ、何が明日かて!こんなの間に合わないでしょうが。係長もわかって私に発注させてますよね?無理な時は無理だって得意先にもちゃんと言わなきゃ、本当に間に合わなかったら得意先にも迷惑がかかるんですよ?係長の事だから私がメーカーに電話をすれば何とかなるとか思ってます?だいたいねぇーー」
若槻先輩の長い説教が始まり、係長は更にショボーンとしてしまった。
こればかりは私も気持ちわかるからフォローできないし、係長の気持ちもわからなくはない。
ドンマイ、係長……。
そんな二人を残して、私は先にオフィスに戻った。