地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
ドキドキさせないで




一日の休みは直ぐに終わり、山岡主任が帰ってから買い物には行ったものの、何だか作る気がしなくてゴロゴロして、カップラーメンを食べた。


お風呂に入って缶ビールを飲んで、早めに寝て、朝になってまた忙しい一日が始まった。


会社に着いて、朝の朝礼が終ると、部長に私と笹山くんは呼ばれた。


「今週の金曜日に商談をするから二人に担当頼むよ。笹山は前倒しをして金曜日はあけれるようにしといてくれ。どうしても行かなきゃ行けないところは俺が行くから。高瀬さんも前倒しで発注書とか多くなるかもしれないけど、金曜日に急ぎの仕事がある時は若槻さんにでも頼んで?じゃあよろしく」


「はい」


二人でそう返事をして机に戻った。


私も商談を山岡主任と一緒にしたことが何回かある。


メーカーさんが新商品の案内をしたり、商品を試食したりもある。
発売前に試食が出来るのはお得だけど、たまにあまり美味しくない商品も『お、美味しいです』なんて言うこともある。
だって『美味しいでしょ?』って言いながらこっちをキラキラした目で見つめられたらマズイなんて言えないから。


それに営業とメーカーの話を聞きながらパソコンに打ち込む作業をするのも大変だ。
値引きが何パーセントまでは出来るとか、何ケースからとか、打ち込む事は沢山ある。


それに商談をして纏めたデータを営業全員に配らないといけないし、会議室に一日こもりっぱなしだ。


確か笹山くんは初めての商談だけど大丈夫なのかな?


私は山岡主任のアシスタントだったし、商談の時もどんどん値引き交渉してたけど、笹山くんは普段歯地味男だし、メーカーさんも笹山くんだと値引きよりも売りを進められそうだな。


「今日から前倒しで得意先を回るので、明日の発注書は日付をちゃんと確認して下さいね?」


「わかった」


「じゃあ俺は今日は帰りが遅くなるんで、何かあったら会社に電話します。それじゃあ行ってきます」


そう言って笹山くんは鞄を持つと、オフィスを出て行った。


月曜日は電話対応に追われつつ、どうにか一日の仕事を終えた。


だが火曜日から木曜日まで、朝に渡された発注書の数が凄かった……。


そして木曜日のお昼休憩に、若槻先輩が一緒に外に食べに行こうと誘われたから行く事にした。



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