地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
「高瀬さん大丈夫?お酒、弱かったのに俺が勧めちゃったからごめんね?」
「いえ、大丈夫ですよ。山岡主任のせいじゃ、わぁっ!!」
「っと、大丈夫!?」
私はよろけて転びそうになったのを、山岡主任は咄嗟に抱き寄せた。
ち、近いっ……顔が近すぎて酔っているせいなのか、鼓動が高まる。
山岡主任は皆が見てドキドキするくらいイケメンとかでもなく、顔は普通だと思う。
私は顔とかで山岡主任を好きになったんじゃない。
山岡主任からしたら私はまだまだ子供かもしれないけど、私からしたら優しくて、同級生の男の人に比べたらやっぱり大人で、優しさと気遣い、大人な彼の魅力に惹かれたのかもしれない。
「す、すみません私ったら……っ」
彼と目が合い言葉を失った。
やっぱり好き……
「どうした?気分でも悪くなった?タクシー捕まえて送ってくよ」
「……やだっ、まだ帰りたくない」
気づいたらそんな事を口走っていて、言った後は顔を上げられずに俯いてしまった。
「……じゃあ、もう少し一緒にいようか?今日は嫁は娘を連れて実家に泊まってるし、明日は仕事も休みだから朝まででも付き合うよ」
彼は優しく微笑むと子供を宥めるように言った。
「子供扱いしないで下さいっ、私だって成人した女性です。私は、私は、山岡主任の事が好きなんですっ」
剥きになった私は言ってはいけない事を口走ってしまった。
言った後に私は口を押さえたが、無かった事にもできない。
山岡主任は目を見開き驚いている。
私はどうしていいかわからなくなり泣きそうになった。