地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
午後からの仕事も終わり、残業はなしで家に帰ることができた。
先週は残業だった事もあり、笹山くんと一緒に居たけど、明日は商談だから笹山くんとは朝にしか会っていなかった。
土曜日は休みだけど本当にデートに行くつもりなんだろうか?
きっと忙しくて忘れてるよね?
忘れていてくれる方がいいんだけど。
それに山岡主任とも挨拶程度で会話もしていないし、ラインだって仕事中だったり家に居る時はしない。
山岡主任からくれば返事はするけど、私からはしたことがないし、なるべく用事がない時はしないでくれと言われていた。
今週、私に山岡主任からラインが送られてくる事はなかった。
ただ待ってるだけも辛いのに、連絡がないのは寂しかったりする。
久しぶりに会って抱かれても、何か物足りなさを感じたり、好きなのにそんな事を思ってしまった。
優しさは変わらないけど、山岡主任との距離が更に広がったきがしてならない。
前はどんなに忙しくても、時間を作ってくれてたのに、今ではなくなってきている。
やっぱり凪が言ってたように別れた方がいいのかな?
家に着いてシャワーを浴びながらそんな事を考えていた。
シャワーを浴びて着替え終わり、リビングのソファーに座った時だった。
私の家のインターフォンが鳴り、見ると山岡主任だった。
「えっ、山岡主任?」
私は画面の山岡主任を見てそう言葉を口にすると、急いで玄関の扉を開けた。
「どうしたの?連絡なしに来るなんて……」
私は驚きを隠せなかった。
「玲美の顔を少し見たかったんだ。会社に今から戻るけどコレ、玲美に渡したくて」
そう言って紙袋を渡された。
「玲美の好きなケーキ入ってるから後で食べて。ゆっくり時間もとれないし、来週は出張で俺いないけど、仕事頑張れよ?」
「山岡主任……」
こうして会いに来てくれた事が嬉しかった。
すると山岡主任は触れるだけのキスをして『じゃあな』と言って帰って行った。
私がいつも別れを考えると、こうして山岡主任は私の気持をわかったみたいに会いにきてくれる。
彼は本当にズルイ人。
揺れる気持すら留まらせるんだから。