地味男の豹変〜隠された甘いマスク〜
それからも次々にメーカーさんが来ては商品の案内や、定番商品を値引きするから百ケース入荷して欲しいなど、色々な話をしていた。
笹山くんの対応は早く、山田さんに内線をかけて聞いたりして、メーカーさんとの話を進めていった。
お昼前になり、次のメーカーさんで午前中の商談は終わりだ。
次のメーカーさんは新商品の飴を紹介したが、サンプルを忘れたみたいで、飴が一つしかなく、それを机の前に置いて、商品画像の載った紙を出して説明した。
「すみません、サンプルを忘れてしまってこんな説明になってしまい、飴も四種類あるんですがイチゴ味しかなくて……よろしかったら一つですが食べてみて下さい」
確かにメーカーさんは私の顔を見て食べて見てくださいって言った。
女性だから気をつかって言ったのかもしれないが、そこまで言われたら味見をしないわけにもいかない。
それに美味しそだしと思ったが、私が手を伸ばす前に笹山くんがその飴を手に取ると、飴の袋を開けて口に入れた。
え、な、な、何であんたが食べるのさ?
ねぇ、わざと?わざとだよね?
明らかにメーカーさんは私を見て"食べて見てください"って言ったの絶対にわかってて食べたよね?
たかが飴を食べられただけだけど、私に勧めた飴を食べられてしまった事に、何だか腹が立った。